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ヨーコの高田馬場ふらふら日記(3)

■■ヨーコの高田馬場ふらふら日記(3)■■ 高田葉子
アウトローなフリマ&ポエムスポット探訪、の巻 

 高田馬場駅の早稲田側じゃないほうの線路の壁沿い(質屋のスズヤ前、
鈴木運送の隣)に、いつごろからか、無人フリーマーケット状態の一角が
ありました。ナースサンダル、ヨーヨー風船、おかまバーで使っているよ
うな、羽毛のマフラーなどが、ランダムにつるされ、ボール紙に「どれで
も1ケ10円です」とあります。どうみても、そのへんから拾ってきたもの
をかきあつめただけ、といった具合で、売れている形跡がありません。野
ざらしなので、真っ白だった羽毛も、しだいにどす黒くなり、ヨーヨーも
しわしわにしぼんでいく様子に気を揉んでおりました。

 1月6日夜、たまたま通りかかったおり、真っ黄色の「警告」ステッカー
が貼られていました。なんでも、「この物件は、道路法、道路交通法に違
反し、歩行者や車両等に多大な迷惑をかけています。至急撤去してくださ
い。この物件は、以前にも警告をしていますので、次回は処分の対象にな
ります。」云々。立派な「道路不正使用」なのでした。「1月7日以降撤去
します」とのなぐり書きからして、ケーサツもかなり御立腹の様子。 と
なると、今宵が最終営業?日なのです。こりゃいかん、ということでです
ね、最後の営業報告を、店主にかわってここに記すことにします。

 扱いアイテムは、シャツ、ホーキ、手押し車、リンゴ箱、ポピーの造花
2本、トランク、など。主力商品は、傘30本。「かえせる人はできるだけ
後で返して下さい」とのフォローもバッチリ。もちろん、どれでも1ケ10円
です。さらに、「金のある人はハト、ネズミ、カラスにえさ代をカンパた
のみます」と動物愛を隠れ蓑に、小銭を稼ぐことも忘れません。

 また、店主は絵心もある人だったようです。お正月に描いたのでしょう
か、日の出の富士山をバックに、ゼロ戦が飛んでいる様子が残されてまし
た。湖にはヨットも浮かんでいます。ネコ好きだったらしく、笑っていた
り、額にシワよせていたり、三角の目をしているネコのほか、ポニーテー
ル(リボンつき)の女の子も添えられ、いい味をだしていました。

 数日後のこと。やっぱり警察は本気だったようで、あとかたもなく、
店はお掃除されていました。失意のうちに、周囲をふらふらしていると、
ブックス高田馬場(BIGBOX裏にある書店)の自販機脇に、つぶやきポエム
が書かれているのを発見。「アーメンハレルヤ/教訓 太陽は昇る今日も/
ブス男 ブス女(ほっかむりしたアンパンマン風イラストあり)です 
土方仕事なし/希望はありません 絶望だ。/ホームレスになりました。」
さらに、ことなる筆跡で、「前進のみだ。努力」と励ましのお返事も…。

 なんだかすこしだけあたたかい気持ちになった帰り道、高田馬場駅
戸山口の壁をみると、「今日も一日元気でいこう 富永より」とマジ
ック書きの力強いメッセージが。 富永さん、あたしもがんばるよ、
と心に誓いつつ、線路脇のフリマの復活をひそかに願いました。

☆著者プロフィール----------------------------------------------------
高田葉子
都内某新刊書店勤務。家賃更新7回めに突入でもまだまだ住みたい…。

【高田葉子 今月の気になる一冊】
『いろは』創刊号…ネット古書店くらげしょりん市川さん編集の愛らしい雑誌。
店では古書コーナーよりも、生活書コーナーで、ものすごく売れています。
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2004年08月24日

投稿日 : 2004年08月24日

ヨーコの高田馬場ふらふら日記(2)

■■ヨーコの高田馬場ふらふら日記(2)■■ 高田葉子

 新聞の折り込み広告で、気になるものは、とりあえず、とっておくほうです。
たとえば、資産家の御曹子と結婚できたり、つぶれかけた小料理屋が大繁昌し
て次々とお金が舞い込む、「風水・五鯉躍サイフ」や、リストラ寸前の夫が重
役に大出世した「神秘のイエロートルマリンブレス」などなど。

 このチラシコレクションのなかに、“パリになった高田馬場”という見出し
が踊る、「ル・シュヴァール新聞」も仲間入りしたのでした。なんでも、“正
統派フレンチ、カジュアル・イタリアン、パティスリ−と3つの店鋪フロアか
らなる、美食・コミュニケーションスペース”が、馬場に誕生したらしいので
す。

 青年部長向井くんから、「元ソーブン堂書店だったところに、こ洒落た店(
食い物や?)が出来た」とツーホーを受け、駆け付けてみると、案の上、この、
“馬場のパリ”のお店でした。 ほんの数十メートル先の松屋で、きのうの夕
飯を済ませてしまった人間が、こんなところに足を踏み入れていいのかしらと
おびえてしまうほど、立派なビルが建っていました。店の前には、胡蝶蘭の鉢
植えがずらーっと並び、大きなショーウインドウからは、お菓子づくりのよう
すがみえます。

 勇気をだして一階のケーキの店へ。喫茶スペースがあるも、がらがらです。
ステンレスぴかぴかの内装や、明るすぎる照明が落ち着きません。なによりも、
早稲田通りを行き交う学生と酔っぱらいたちの「どうしちゃったの、この店は
…。」という冷ややかな視線に耐えかね、おいとましようとショーケースをみ
ると、おいしそう。値段もやや高めですが、思っていた程でもなく、まずはシ
ュークリーム1コ(250円)を買いました。たった1コなのに、箱に入れ、紙
袋まで用意してもらい、なんだかすまないなあと思ったので、ニ階のイタリア
料理店「フラットリア」をのぞいてみることにしました。

 足を踏み入れるやいなや、ボーイが、「お品物、冷蔵庫でお預かりしましょ
う。」と寄ってきました。さすがに、「シュークリーム1コしかはいってない
んです。」とは言えず、ことわりました。2800円、3800円のコースが用意さ
れていましたが、一人で松屋に入れても、一人でコースを食べるのは、さすが
に自分が可哀相におもえ、「単品でもよいですか。」と蚊の泣くような声で尋
ねると、あっさりOKだったので、「海老とルッコラのトマトソースパスタ」を
たのみました。

 まわりをみると、仕事帰りのOL二人組、学生カップル、という、ごく平均的
な客層で、ほっとしました。チラシには、「森のなかで食事をしているような
気分になれる」とありましたが、森とはいわないまでも、テーブルがなかなか
うまいこと配置してあって、居心地は悪くありません。一人掛けの席でも、街
路樹や、吹抜けからそびえるツリーのイルミネーションが、窓越しに最もきれ
いに見えるよう設計されていて、おもわず馬場にいることを忘れてしまいそう
になりました。(ただし、視線をほんの少し下げると、「着物と帯 佐藤」&
「レコード買入タイム」の看板アリ。)

 海老がプリプリでおいしかったなーと、料理に満足しながら店をでようとす
ると、こんどは、馬柄のネクタイをした紳士がすーっとやってきて、「御要望
がございましたら、なんなりとお申し付けくださいませ。」とおっしゃります。
「3階のフレンチをごちそうしてください。」と喉元まででかかりました。だ
ってね、「豚足、とさか、アヴォカドをしのばせた有機トマト、キュリーソー
ス」とか、「新鮮な海の幸のプラトー、ブルターニュの日々!」とかいうメニ
ューがあるんですよ。しかも、「NYのフィフス・アベニューにあるダイニング
を訪れたような気分」(チラシより)になれるんですって。キャー。

 と、興奮さめやらぬまま道路を渡り、マツキヨでホッカイロ貼るタイプ10コ
入り198円を買った帰り、ふと、向かいにある件のビルをみあげると、両隣り
から、真っ赤な「カルビ先生」と真っ黄色の「カラオケ歌広場」のネオンが降
り注いでいて、なんだかお口直しのデザートのようにおもえたのでした。やっ
ぱり、こっちのほうが安らぐんだな。この街では。


☆著者プロフィール----------------------------------------------------
高田葉子
都内某新刊書店勤務。家賃更新7回めに突入でもまだまだ住みたい…。

【高田葉子 今月の気になる一冊】
『いろは』創刊号…ネット古書店くらげしょりん市川さん編集の愛らしい雑誌。
店では古書コーナーよりも、生活書コーナーで、ものすごく売れています。
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2004年08月17日

ヨーコの高田馬場ふらふら日記(1)

■■ヨーコの高田馬場ふらふら日記(1)■■ 高田葉子

 上京してはじめて住んだ街が高田馬場で、ことしで13年めになります。
 通学路に信号ひとつなく、ランドマークは火の見櫓、のような環境で育った
私にとって、プール、ビリヤード場、それに本屋さんまでが一つの建物に詰ま
った「ビッグボックス」の存在は、衝撃でした。こんな便利なところが近所
にあるなんて、本当に都会で暮らしているんだなーと実感したものです。

 ただ、当時、浪人生だったので、せっかくのビックボックスデビューも、駅
前にたむろする学生サークルのコンパ&ボーリング大会のような心踊るイベン
トで、ではなく、予備校帰りに、ひとりファンシーショップでマニキュアの試
し塗りをしたり、三省堂で赤本を買ったりといった地味な結果におわりました。

 そんなあこがれの場所であったにもかかわらず、実は、この建物の2階から
上にはほとんど足を運んだことがないことに気づき、いまさらながら探検し
てみることにしました。

 まずは、最上階へ。「ニューヨークの北海道フェア」という紛らわしい名前
の催し開催中のレストランと、宴会場がありました。夜景を眺めながらのディ
ナーが売りのようですが、カネロニグラタン、ヒレ肉のピカタピッツアイオー
ラ風など、馬場に不似合いな響きのメニューが原因か、閑散としていました。

 緑・赤・青の西武カラー裏階段をおりると、キテイちゃんボウルとレオ人形
がお出迎え、のボーリング場です。「箱だしだとキャッチがよく、キャリーダ
ウンにも強いが、ポリッシュに良さはのこる」といった素人には暗号のような
新製品情報の掲示板や、オイル抜きツールも揃い、本気で投げる人が出入りし
ていることがわかります。一方、バーバパパや、トトロをピンに描く「ピンペ
インテイングコンテスト」などゆるい企画も充実のようで、好感がもてます。

 ゲームコーナーのトイレには、「未成年の喫煙者は通報します」との貼り紙
が…。その甲斐も虚しく、プリクラ機械に垂れさがるビニールカーテンのモデ
ル写真(指をL字型にし、ポーズをキメた女子高生。「CHO→ゲンキ!!」と
いう文字入り)の目・鼻・眉間すべてに「焼き」が入っていました。ちなみに、
男性同士の利用が禁じられているプリクラもあり、とても気になりました。

 ビートのきいたリズムに誘われ、階下へ進むと、「くぅるっとぉーまわって
ぇー、シックスマンボォー、フウーッ!」と葛城ユキばりのハスキーボイス姐
さんが、エアロビ指導中で弾けていました。真剣に見ていたからか、プログラ
ムを渡され、勧誘されました。「ちょこっと燃焼」「ファットバーナー」とい
った魅力的なネーミングのコースが並び、人集めもなかなか大変なようです。

 なじみのないフロアを行き来したので、お口なおしに、コンコースの古本市
で締めることに。古本を探すのはもちろん、帳場のおじさまたちをこっそりの
ぞくのも楽しみなのです。「はい、300万円ねー」とおつりを渡されたり、蚊
取り線香の缶利用の輪ゴム入れなどをみるたびに、ビックボックスで一番好き
な場所はここだなあとおもいます。「建物の正面の壁画は“走る人”のほかに、
何枚か隠れている」というのが、ビックボックス伝説らしいのですが、そのま
ぼろしの一枚が、古本即売会風景だったらいいのになとおもいました。


☆著者プロフィール----------------------------------------------------
高田葉子
都内某新刊書店勤務。家賃更新7回めに突入でもまだまだ住みたい…。

【高田葉子 今月の気になる一冊】
『いろは』創刊号…ネット古書店くらげしょりん市川さん編集の愛らしい雑誌。
店では古書コーナーよりも、生活書コーナーで、ものすごく売れています。
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2004年08月02日

[ヨーコの高田馬場ふらふら日記過去のコラム]