大好きな趣味で開業する!ネット古本屋開業マニュアル
大好きな事で開業や副業をしたい」方には、自分が好きな趣味の分野で、お店が開けるネット古本屋をおすすめします。ワクワクな副業・週末起業ライフ実現の方法を連載!
■■通天閣の見える街から(9)■■ 八子博行
〜栗谷川虹さんの内田百軒文学賞受賞作『茅原の瓜』のことなど〜
7月2日(金)〜4日(日)、恒例のOMM(大阪マーチャンダイズ・
マートビル)の古書ブックフェア−が行われた。今回は、「BOOKISH」
でも告知を掲載した関係から、会場で「BOOKISH」の販売をさせてもら
うことになった。「BOOKISH」は、3日間トータルの売り上げが25冊、
規模の割にはなんとも微妙な数字ではあります。
で、初日のお昼に、「BOOKISH」次号の特集「画家の書いたエッセ
イ」(仮)について、「SUMUS」同人の林さん、山本さん、扉野さんなど
から、意見を頂いた。林さん、そして扉野さんは、美大出身と言うこと
でアート関係の本に精通しておられる。
「SUMUS」の方々とは、南陀楼さんを除いては、初対面で、ちょっと
緊張ぎみだったのだが、みな気さくな方々で、貴重なアイデアを頂く
ことが出来た。興味深い画家達の名前が、次々と挙がる。
OMMの古書市が終わった今週、地元江坂の天牛書店でちょっと面白い本
を見つけた。『茅原の瓜〜小説 関藤藤陰伝・青年時代』(栗谷川虹・
作品社)という本で、帯に第七回内田百間文学賞受賞とある。栗谷川
さんは、以前、「BOOKISH」で木山捷平特集をやった時に、お世話に
なった方で、『木山捷平の生涯』(筑摩書房)という著作がある。
一昨年のちょうど今頃のこと、木山特集の件で、栗谷川さんには、
幾度となく電話を通じてお話を伺った。
こちらの稚拙な質問に対しても、ゆったり丁寧に答えて頂いた。
以来、御無沙汰だったのだが、こんなところでお目にかかろうとは。
懐かしさで、思わず本を手に取りレジへ。関藤藤陰(せきとう
とういん)は、栗谷川さんの自宅から1.5kmほどの、天神社の
社家に生まれた人物。氏の日常の散歩コースになっている場所でもある。
その関藤藤陰のことを栗谷川さんが知ったのは、森鴎外の『伊沢蘭軒』
の中にその記述を見い出してからで、散歩に通うようになって、何年も
後のことだったという。それ以来、関藤藤陰について調べはじめるのだが、
意外にも、幕末の歴史の中に途方もなく広がっており、幕末維新を一身
に体現したような人物だったと言う。
維新の尊王思想の支柱、頼山陽、開国時の老中主席・阿部正弘、
攘夷派の後ろ楯となった徳川斉昭など、みなその役割を演ずるのに、
藤陰の手を借りていたという。さらには、クナシリ・エトロフ・カ
ラフト南部まで踏査した探検家の顔まであるこのような大きな仕事
をした人物でありながら、世間的には殆ど知られておらず、歴史の
闇に忘れ去られた人物になったという。
というのも、生涯七度にわたって名前を変えており、役割が変わ
るごとに新たな名前で登場してくる。そのことにっよって断片化さ
れた事実のみが残り、同一人物としてのトータルな像が見えにくく
なってしまったという。
この本では、「青年時代」ということわりが付されているように、
頼山陽の愛弟子時代についての記述がメインになっている。これだ
けでも完結した史伝小説として十分面白いのだが、今後、阿部正弘
や徳川斉昭との関わりや、北方の探検時代についても続けて刊行し
てほしいものだ。
☆著者プロフィール-------------------------------------------
八子博行(やこ・ひろゆき)
1950年大阪生まれ。
小学校教師を20年続けた後、関大前で「ゲートマウス・カフェ」と
いう飲食店を経営。(ゆくゆくは古本も置きたいという)
昨年、季刊雑誌『BOOKISH』の創刊に参加、今年6月刊行の4号から
編集・発行人に。
http://homepage1.nifty.com/vpress/bkbackno.html
◎『BOOKISH』のホームページ゙開設!
http://www.sutv.zaq.ne.jp/ckabb202/
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■■通天閣の見える街から(8)■■ 八子博行
久しぶりに競馬でダービーを当ててしまった。
熱心な競馬ファンではないので、G1の大きなレースをたまに楽しみで
買うという程度なのだが、それでも、ここ十年ほど馬券をとった記憶
はないのだから、ハルウララも真っ青。
それにしても、ダービーを勝ったキングカメハメハの強かったこと、
久々の怪物です。なんといっても、その強さ、風格と、チープな馬名
とのアンバランスが絶妙で、心くすぐられる。で、その配当金を懐に、
「アンダーグラウンド・ブックカフェ」に行こうと考えたのだが、
あいにく、その前日12日に店に予約が入ってしまった。しかも深夜
から朝方までという、徹夜のイベント。(残念)
『BOOKISH』7号が、刷り上がってきた、表紙のカラーは毎回迷うところ
だが、今回は、青系でと決めていた。うちの店の白熱灯の下だとイメージ
通りの仕上がりなのだが、蛍光灯の下で見ると、ちょっと鮮やかすぎて
イメージとは違う。難しいもんです。
13日からの『アンダーグラウンド・ブックカフェ』で、売って頂ける
ことになった、それが初お目見えということになる。(買ってください)
ところで、7月(3日〜11日)にうちの店で、お馴染みの貸本喫茶
『ちょうちょぼっこ』による古本バザーをやることになった。「食」関係
の本を中心にと いうことで、『 book is deliciouce』というタイトル
のイベント。今回は私も、古本を出そうということで、「食」関係の本
に目を向けている。なもんで、『ロッパの悲食記』(古川緑波・ちくま
文庫)や『食物漫遊記』(種村季弘・ちくま文庫)、そして『もの食う
話』(文芸春秋編・文春文庫)といったアンソロジーに目を通す。
それにしてもロッパの食うことへの渇望の凄いこと。ただでさえ、
「食」=「命」の人が、戦時中の食べ物の不足した時代に生きることが、
どれほど過酷なものであることか。『悲食記』たる所以である。それは
そうなのであるが、それにしても、実にうまく好物のありかを見つけて
くる、物のなかったあの時代に。 食べ物に対する、嗅覚というのか
強烈な思いが、食べ物を次々と引き寄せるとしか言いようがない。
「強く願えば夢は叶う」、というような最近流行の自己実現のための
お題目が、ロッパの例を見ていると、俄然リアリティを帯びてくる。
私などはどちらかというと、「物欲」の方が勝っていて、欲しい物
を手に入れるためなら、「食」の方は二の次三の次になってしまう。
とはいうものの、そこそこは「食」の楽しみも享受したいわけで、
そのあたり、あれもこれもと、根がいぢ汚くできている。
だから、川本三郎さんのように、「食」はあくまでも街歩きとセット
で、見知らぬ小さな街を歩き廻った後、その土地に溶け込んだような
古い居酒屋の暖簾をくぐり、なんということのないアテで喉の乾きを
潤すというのが、絶妙のスタンスのように思う。
☆著者プロフィール-------------------------------------------
八子博行(やこ・ひろゆき)
1950年大阪生まれ。
小学校教師を20年続けた後、関大前で「ゲートマウス・カフェ」と
いう飲食店を経営。(ゆくゆくは古本も置きたいという)
昨年、季刊雑誌『BOOKISH』の創刊に参加、今年6月刊行の4号から
編集・発行人に。
http://homepage1.nifty.com/vpress/bkbackno.html
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■■通天閣の見える街から(7)■■ 八子博行
〜腰痛と編集〜
久しぶりに腰痛に見舞われている。
もともと、腰痛持ちで、一度ギクッと行くと一週間程寝たきりの状態になる。
ひどい時は、3〜4ヶ月に一度くらいの頻度でそんな腰痛に見舞われていた。
ここ1〜2年は随分調子が良くて、腰痛のつらさもすっかり忘れていた。
そんな時に、突如襲われた腰痛だった。
ただ、今回は、ギクッと行く手前で踏ん張っていて、最後の一線はかろうじて
阻止しているという状態。おかげで、寝込むことはないのだが、その分、なか
なか完治しない。
先日も、東京から、本メルマガにも連載中の南陀楼綾繁氏が来版され、
うちに店にも立ち寄って頂いたのだが、その時も、椅子に座るのが怖くて立った
ままの状態で、飲んだりしゃべったりという、変な飲み会になってしまった。
そんなこんなで、雑誌の編集も滞りがちで、早くから原稿を頂いている
ライターの皆さんには、ご迷惑をおかけしてしまった。さて、その『BOOKISH』
の7号だが、「書店の記憶」という特集タイトルで、今月下旬か来月初旬には
書店に並ぶ予定だ。
今回の特集では、タイトルにもあるように、現在の書店の姿は勿論、過去の
書店にも目を向けたかった。大げさにいうと、書店の文化史のようなものを
辿ってみたいという。
同時に文化と人が交差する空間としての書店というものを考えてみたかった。
つまりサロンとしての書店空間である。そのためには、書物史における書店の
展開をなぞるだけではなく、具体的に個々の書店や人が見えてこないと、単なる
一般教養的なお勉強になってしまう。
この辺りを程よくバランスをとるのが、駆け出し編集者にはつらいところで、
決定的に情報が不足している。となると、いろんな人の知恵を借りるしかない
わけで、今回もたくさんの方のお世話になった。
で、今回の特集を簡単に紹介してみたい。
まず、出版・取り次ぎ・書店という本に関わる様々な仕事が、未分化で緩やかに
統一されていた時代の書店の魅力的な相貌を、イギリスと日本を例に解き明かして
もらった。
書店は、文化と人が出会う場所でもあった、これは挙げていくときりがないと
思われるのだが、とりあえず、「内田魯庵と丸善」「魯迅と内山書店」「斎藤昌三
と東京堂」「波屋と同人誌『辻馬車』」に代表してもらった。
同時に、ごく普通の人がある書店と出会い、一気に本の世界にのめり込んで
いくことがある、そんな個人的書店体験を何人かの人に語ってもらっている。
また、正統の書店史からは外れながらも、もう一つの読書空間を形成してきた
貸本屋をはじめとする、いわゆる「赤本」を提供してきた夜店などアウトサイド
に位置する書店も視野におさめたかった。
そして、現在の書店に目を向けると、出版不況や活字離れなど、景気の悪さ
ばかりが喧伝される昨今、一方において新たなコンセプトで立ち上がり、面白い
展開を見せている書店もあるわけで、そんな知られざるユニーク書店をレポート
してもらった。
☆著者プロフィール-------------------------------------------
八子博行(やこ・ひろゆき)
1950年大阪生まれ。
小学校教師を20年続けた後、関大前で「ゲートマウス・カフェ」と
いう飲食店を経営。(ゆくゆくは古本も置きたいという)
昨年、季刊雑誌『BOOKISH』の創刊に参加、今年6月刊行の4号から
編集・発行人に。
http://homepage1.nifty.com/vpress/bkbackno.html
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■■通天閣の見える街から(6)■■ 八子博行
藤森良蔵と「考え方研究社」
この4月からひょんなことから、近くの短大で非常勤講師を勤める
ことになった。
小学校教師を20年少し勤めた関係で、小学校教職員免許の取得の
ために必要な算数教育関係の講議を受け持つことになった。
というより、なってしまったと言う方がいいだろう。
既に、教師を辞めて8年、教育などと言う分野については、ほとんど
関心を持つことはなかった、というか遠い世界の出来事になって
しまっていた。それが、今回の件で、またもや、算数と言う教科に
ついてのネタの仕込みに追われることになってしまった。
店もあるし、雑誌も出さなければならない、そこへ持ってきて今回の話。
ほとんど、頭のなかはパンク状態、実にやばい。
今、現在の私が、算数という教科を興味深く研究できるのは、
一体、どんな分野、どんな領域なんだろう。やるからには、それなりの
モチベーションを持ちたい。と、いろいろ考えを巡らせるなかで、ふと
思い出したのが藤森良蔵のことだ。
藤森良蔵は、第一次大戦から第二次大戦にかけて、高等学校や専門学校
を受験したことのある人ならたいてい知っていると言われる、受験数学
の分野において著名な人物である。確か小島政二郎の「鴎外・荷風・
万太郎」にもこの人のことに触れた一節があったように思う。
そんなこともあって、「かわりだねの科学者たち」(板倉聖宣・仮説社)
という本を手にとった。とりあえず、藤森良蔵という人物のアウトライン
を知りたかったのである。この本を讀んでみて、彼の数学教育の革新性
などについては、具体的な内容は分からなかったものの、「反骨の受験屋」
としての生き方や、彼が主催した「考え方研究社」の活動は、予想通り、
興味をかき立てられるものだった。
彼は、明治15年(1882年)、長野県上諏訪に生まれた。明治期に
青春を過ごした人物によく見られる、反骨の国士気分といった雰囲気を
彼も持っていたようだが、国のためではなく、受験生のために命を賭けた
事業を展開するというのが、面白く興味深い。
それにしても、何故、受験数学なのだろう。
それは、彼自身が、数学が苦手で困り抜いた経験が大きかったようだ。
東京物理学校(現・東京理科大学)という、入るより出る方が難しい
とされていた学校での猛勉強で苦手な数学を克服すると、同じく、
数学で困っている受験生を助けるために働くことを志す。
彼は、学校という公の場ではなく、在野の立場で、より受験生に密着
した受験現場に身を置いて活動を展開した。
そのために設立されたのが、「考え方研究社」だ。
「考え方研究社」では、彼の教育理念である「考え方主義」を体現・
宣伝するための雑誌「考え方」や受験参考書を発行したり、受験生
のための公開講座「日土講習会」を催したりした。戦後の旺文社を
思わせるような活動だ。しかし、彼は、単なる受験屋ではなかった。
反骨の人であり、創意・工夫の人なのであった。
いずれにしても、建て前の上の主流である学校の優れた教師だけに
スポットを当てるのではなく、すぐれた受験指導者である藤森良蔵
のような人の仕事もきちっと射程に入れ評価しようとするこの本の
著者、板倉聖宣氏の姿勢には大きな共感を覚える。
しかし、藤森良蔵の受験参考書の名著の数々、手に入るのだろうか。
☆著者プロフィール-------------------------------------------
八子博行(やこ・ひろゆき)
1950年大阪生まれ。
小学校教師を20年続けた後、関大前で「ゲートマウス・カフェ」と
いう飲食店を経営。(ゆくゆくは古本も置きたいという)
昨年、季刊雑誌『BOOKISH』の創刊に参加、今年6月刊行の4号から
編集・発行人に。
http://homepage1.nifty.com/vpress/bkbackno.html
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■■通天閣の見える街から(5)■■ 八子博行
〜大阪の二つの旬のスポットが本に〜
2月28日に本メルマガにも連載を寄せておられる、南陀楼綾繁こと
河上進さんが来阪し、「飛田百番」という料理屋で飲み会が持たれた。
「飛田百番」というのは、大阪でもそして全国でも珍しいのではないか
と思うのだが、まさにバリバリ現役の遊郭・飛田新地にある。(なもん
で、新地に入ると「飛田百番」に着くまで、あちこちの茶屋からお誘い
の声がかかる)
大阪には、この飛田新地のほか九条に松島遊郭があり、こちらも現役だが、
この飛田新地はスケールや活気という点で松島を圧倒しているようだ。
「飛田百番」は、かっての遊郭建築をそのまま使って料理屋として営業
しており、大阪名物の一つといってもいいだろう。
その「飛田百番」での飲み会でのこと、丁度私たちが使っていた前の部屋
で飲んでいたのが、『飛田百番』(橋爪紳也監修・創元社)という写真集
を出版したばかりのフリーの編集者・原章さん一行だった。しかも、
『飛田百番』出版のお祝い会だったらしい。原さんは、もと創元社で活躍
され、海野弘さんの『モダンシティふたたび』や、北尾鐐之助『近代大阪』
の復刻を手がけた人だ。『BOOKISH』も、4号『海野弘が歩いたモダン
シティ』では、原さんに随分御世話になった。
さて、その写真集だが、飛田新地の中でも遊郭建築として一際威容を誇る、
『飛田百番』の姿を8ヶ月かけて、休日である月曜日に撮影を行なったもの
で、現在、照明として使われている蛍光灯を全部はずし、当時使われていた
タングステンライトにつけかえ撮影されたらしい。また、この本を企画した
橋爪紳也さんと吉里忠史さんは、「百番を愛する会」という私設応援団の
ような飲み会を行なっている方々で、『百番』内部の細部に至るまで紹介は
行き届いている。私は、今回の飲み会を含めて、まだ二回しか『百番』を
訪れたことはないが、この一冊があれば、『百番』の楽しみ方がぐっと
広がるようで、次に訪れるのを心待ちにしているところだ。
そして、もう一冊、原さんの関わった本で、同じ頃刊行された、『大阪・新・
長屋暮らしのすすめ』(橋爪紳也・創元社)こちらも大阪の旬の話題を
取り込んだ一冊。
今、大阪では、空堀や中崎町など、古い長屋が残っている街で、長屋を改装
してカフェやギャラリー、古着や雑貨を売る店などが出来て、訪れる人たちを
楽しませている。
この本でも紹介されている中崎町で「Salon De AMANto 天人」というカフェ
をやっているJUN君は、かってうちの店にもよく来てくれていたのだが、3年ほど
前に、一人で長屋の改装をはじめ、「空きや再生パフォーマンス」と名づけ、
改装の過程を公開し、延べ1129人のひとに手伝ってもらいカフェをオープン
した。
彼なんかの例を見ていると、経済の地盤沈下が叫ばれる大阪だからこそ、既存の
ストックを利用しつつ、低予算でやりたいことができるという、若者たちにとって
は、結構、いい状況が生まれつつあるのでは、などと考えたりもする。
ところで、大阪の長屋だが大正期の調査によると、東京や京都が、同じ借家でも
一戸建ての独立家屋が過半数を占めいていたのに対し、大阪の場合、大半は長屋
形式だったという。
ただ、大阪の長屋は、裏長屋の狭いイメージではなく、一戸一戸の規模が大きく、
他の都市の町屋に匹敵するものが結構多いらしい。
どおりで、前述のJUN君の「Salon De AMANto 天人」などは、随分、広々として
いて長屋のイメージにそぐわないのに驚いた記憶がある。
いずれにしても、大阪で今、一番おもしろい二つのスポットを本にパックしてしま
った原さん、やっぱり感度のいい編集者なんだと思う。
☆著者プロフィール-------------------------------------------
八子博行(やこ・ひろゆき)
1950年大阪生まれ。
小学校教師を20年続けた後、関大前で「ゲートマウス・カフェ」と
いう飲食店を経営。(ゆくゆくは古本も置きたいという)
昨年、季刊雑誌『BOOKISH』の創刊に参加、今年6月刊行の4号から
編集・発行人に。
http://homepage1.nifty.com/vpress/bkbackno.html
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■■通天閣の見える街から(4)■■ 八子博行
『BOOKISH』6号(特集・戸板康二への招待)が1月中旬に刊行された。
『BOOKISH』の場合(というか、新刊書籍はどれもそうなのだろうけ
ど)、新刊が刷り上って各取次ぎ(今のところ、東販・日販・大阪屋)
への配本数やビレッジプレス経由の直販数が決まって、印刷所からそれ
ぞれに送ってもらうと、当然のことながら、雑誌は編集の手から離れて
しまう。
つい先日ま手を焼かせていた腕白坊主が、取りあえず一人前になって家
出をして行ってしまったような状態で、ある意味、ほっとすると同時に、
空虚でなんとなくさびしい時期でもある。
そんな中、編集作業以来、手にしていなかった戸板康二の著作を久し
振りに手にとった。
『BOOKISH』の特集で、坪内祐三さんが取り上げていて気になって
いた、『演芸画報・人物誌』(昭和45年・青蛙房)。
特集で、坪内さんはこの本のことを、こう書いておられる。
「私は、この本をその手の人物に興味を持ち始めた今から十数年
前 ‥‥‥ 。 その手というのは、明治大正の演劇関係文筆家は
もちろん、幸堂得知や饗庭篁村といった根岸派の文人や青柳有実、
坂本紅蓮洞、伊藤静雨といった畸人たちのことをさす」
ここに名前の挙がっている人物は、どれも興味深い。この一節を読ん
だために、『演芸画報・人物誌』は、私の中にインプットされたよう
なものである。
そして、同じ文脈の中で、坪内さんは、もう一つ大事なこの本の基本
情報をさりげなく挿入させておられる。
「一種の貴重な人物辞典として愛読(むしろ愛用といったほうが
適切か)した。」
確かにこの本は、「人物辞典」といってもよさそうだ、なにしろ百人
もの人物を戸板康二は、ここで取り上げているのだから。
であるなら、当然、「愛読」より「愛用」と言った方がピンと来る。
「演芸画報」(1907年〜1943年)は、明治・大正・昭和という三代に
わたる演劇雑誌であり、メジャー・マイナーを問わず、その時代の演劇
ジャーナリストがほぼ顔をみせている雑誌であった。
従って、先に坪内さんの挙げた「その手の人物」以外にも気になる人物
はいろいろ出てくる、「根津権現裏」を書いた藤沢清造、久保田米遷の
息子、米斎・金遷、さらには野村無名庵や、正岡容、長谷川時雨、食満
南北など、挙げだすときりがない。
中でも坂本紅蓮洞には惹きつけられた、前から名前は耳していたものの、
初めてどんな人物かがわかった。この本には、そんなに詳しく触れられ
ていないのだが、水上瀧太郎の「貝殻追放」や吉井勇の「娑婆風流」に
詳しいとある。「貝殻追放」だけは持っていたので、目を通してみたが、
実に面白く、なんとも魅力的な人物。「娑婆風流」の方もなんとか、読
んでみたいのだが、こちらは、古書価格が高く、手を出せそうもない。
☆著者プロフィール-------------------------------------------
八子博行(やこ・ひろゆき)
1950年大阪生まれ。
小学校教師を20年続けた後、関大前で「ゲートマウス・カフェ」と
いう飲食店を経営。(ゆくゆくは古本も置きたいという)
昨年、季刊雑誌『BOOKISH』の創刊に参加、今年6月刊行の4号から
編集・発行人に。
http://homepage1.nifty.com/vpress/bkbackno.html
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■■通天閣の見える街から(3)■■ 八子博行
『BOOKISH』6号「特集・戸板康二への招待」がやっと出来上がった。
没後10年の去年、刊行したかったのだが、諸々の事情で、年明けの刊行となって
しまった。年の暮れも迫った、26日に刷り上ったのだが、最終的には二晩ほど
徹夜という状態だった。それもこれも、あまりにも手際の悪い私のせいで、
謂わば自業自得。執筆して頂いた方々や、当世子夫人には、早速お送りしたのだが、
当世子夫人に喜んでいただけたのが、何より嬉しくほっとした。
今回、『BOOKISH6号』刊行に当たって、HPを起ちあげることにした。
http://www.sutv.zaq.ne.jp/ckabb202/
で、コンテンツなのだが、編集委員のコラムとともに、大阪で「オダサク倶楽部」
という織田作之助をキーワードに、活発な動きを続けている井村身恒さんにもコラム
ををお願いした。題して「オダサクシティ遊歩日記」、ただし、「日記」とは言う
ものの毎日更新というわけには行かない、せいぜい月に2〜3回というところだろう
か。
その分、編集委員のコラムがあるので、そちらをご覧願えたらと思っている。
井村さんは、『BOOKISH』4号の「海野弘が歩いたモダンシティ」のときに、
インタビューをさせてもらった。堺で高校の先生をされてる方だが、雑誌『大阪人』
の連載をはじめ、大阪を盛り上げようという様々なプロジェクトとも関わっており、
非常に顔の広い人だ。とりわけ、去年11月頃に、道頓堀の老舗うどん屋「今井」で
催された「道頓堀ジャズを聞く会」というイベントには、興味をそそられた。
「道頓堀ジャズ」という、ローカルな名前を前面に押し出した潔さがなんとも痛快で
心地いい。しかも、これはライブ演奏ではなく、蓄音機によるSPレコードの鑑賞会で
ある。
「今井」は現在でこそ、うどん屋として有名だが、もともとは楽器店で、楽器のほか
にレコードや楽譜なども商っていたという。SPレコードをかける蓄音機も所蔵してい
るわけで、そんなこともあって、会場が「今井」となったのはいろんな意味で、会の
趣旨にもぴったりだったようだ。とはいうものの、生憎私のほうは、
例の「ちょうちょぼっこ」の古本バザーのイベントとかちあって参加できなかった。
しかし、「おもろい」イベントの仕掛け人として、再度、井村さんに対する興味が
高まってきていた。
年が明けて早々、久し振りにオダサク縁の「自由軒」で、井村さんとお会いした。
カレーとビールで腹ごしらえをした後、華の家ケイさんという、ちんどんライブで
活躍している女性が経営する懐メロ・スナック「はなのや」に向かった。懐メロと
言っても、半端な懐メロではない、戦前・戦中・戦後のあまり聞いたことのない
唄を、お客は、実に楽しそうに歌っている。なんともディープな懐メロスナックであ
る。
もちろん、ママであるケイさん率いるチンドン・バンドのライブもある。
ともあれ、暮れから、雑誌の編集で引きこもりがちだった私にとって、久々に
爽やかな外気に触れた一夜だった。
☆著者プロフィール-------------------------------------------
八子博行(やこ・ひろゆき)
1950年大阪生まれ。
小学校教師を20年続けた後、関大前で「ゲートマウス・カフェ」と
いう飲食店を経営。(ゆくゆくは古本も置きたいという)
昨年、季刊雑誌『BOOKISH』の創刊に参加、今年6月刊行の4号から
編集・発行人に。
http://homepage1.nifty.com/vpress/bkbackno.html
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■■通天閣の見える街から(2)■■ 八子博行
12月6・7日(土・日)と、私の店で、堀江で貸本喫茶をしている「ちょうちょぼっ
こ」の女の子たちが「古本バザー」を開いた。
「ちょうちょぼっこ」とは、今年の春ごろ彼女たちが出した、『本箱』という素敵な
大阪の古書店マップを拝見し、『BOOKISH』4号に彼女たちのスペースを紹介させ
てもらって以来、ちょくちょく行き来をしていて、そんな付き合いの中で今回の
古本バザーの話が実現した。
「ちょうちょぼっこ」の魅力は、その名前から来るイメージ通り、主催する四人
の女の子たちの、とてもまったりした雰囲気につきるはないだろうか。オジさんで
ある私も話していて疲れない、楽チンなのである。今回は、そんな四人の女の子が
仕入れた300冊弱の古本を展示・販売した。
勿論、プロの古本屋ではないから、市などで仕入れるのではなく、一人一人が古
本屋を足で稼いで仕入れてくる、いわば「せどり」で集めた本である。これが見て
いるとなかなか楽しい。
「せどり」で、しかも古本屋の百円ワゴンや三百円の棚を回るだけで、よくもまあこ
れだけ集められるものだと感心させられた。
しかも守備範囲が広い、渋い文芸系の本や、サブカル系、児童書やコミックなどに
混じって、『もうちょっとで最高』(奈良林祥・ワニブックス)なんていう一昔前の
ハウツーセックス物まで混ざっている。
今回のバザーは、過去行ったバザーの中でも最高の売り上げがあったそうで、
ともに企画した私としてもまずは成功ということで、ほっとしていると同時に、
こんなことなら私も出せばよかったなんて思ったりした。
『BOOKISH』の方は、6号「特集・戸板康二への招待」の編集に追われている。
この特集の中で、初めて戸板康二の世界に触れたのだが、その奥深さにはまって
しまった。専門である歌舞伎や劇の評論から、様々な人物誌やミステリーなど、
戸板康二の世界は広く深い。
そのような、仕事の広がりから来るものなのだろうが、その交友圏の広さにも驚か
される。同時に、これは山の手育ちの慶応ボーイである戸板康二の人付き合いの
スマートさの賜物のように思えてならない。
ここで言う、スマートさとはカッコ良さやおしゃれというのとは、ちょっと違う。
他者に対するセンシティブな配慮とでも言ったらいいのだろうか。
戸板康二自身は、恐ろしく不器用な人だったらしいが、こと人との付き合いに関して
は、話し上手で駄洒落好き、会話の名手だったようだ。そして、気配りを忘れない、
よく語られるエピソードだが、外出する時には、祝儀袋を忘れず、札は常にピン札を
用意していたという人だ。
また、戸板康二の文章は、難解な言い回しや難しい語句がほとんどなく、とても素直
で読みやすい。
しかも、歌舞伎評論や人物評伝にしても、批判めいた悪口はほとんど書かれておら
ず、これについては、逆に周囲からとかくの指摘があったらしい。また、ミステリー
でも『団十郎切腹事件』(昭和35年)で直木賞をとるほどであったが、これまた、
殺人事件がほとんど起きないミステリーとして有名である。
このような戸板康二の過剰なものを嫌う資質が、とても好ましく思える。いい意味で
の育ちのよさ品のよさが感じられる。
恩師である久保田万太郎は、毀誉褒貶の激しい人で、その名誉欲や権力欲、ボス
的体質について語られることが多く、久保田万太郎に関する評伝は、どれをとって
も面白く、はずれがないという評判まであるらしい。
それはそれで、魅力的な人であり、興味深い人物ではあると思う。
しかし、付き合うとなると話は別だ、やはり戸板康二のような人物と付き合いたい。
ともに、慶応出身という共通項はあるものの、片や下町育ちと山の手育ち、その
キャラクターはというと、なにからなにまで対称的な師弟だが、お互いそれぞれに
ないものを見続けていたのかもしれない。
☆著者プロフィール-------------------------------------------
八子博行(やこ・ひろゆき)
1950年大阪生まれ。
小学校教師を20年続けた後、関大前で「ゲートマウス・カフェ」と
いう飲食店を経営。(ゆくゆくは古本も置きたいという)
昨年、季刊雑誌『BOOKISH』の創刊に参加、今年6月刊行の4号から
編集・発行人に。
http://homepage1.nifty.com/vpress/bkbackno.html
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■■通天閣の見える街から(1)■■ 八子博行
今回から、コラムを書かせていただくことになった。
『BOOKISH』という、本を巡る評論・情報を取り上げた季刊雑誌の編集
をしており、このコラムでは、『BOOKISH』を通じて出会った人・本・
書店などのことをランダムに書けたらと思っている。
今回は、初回ということで、私のことや、『BOOKISH』のこれまでの
歩みなどを自己紹介もかねて書いてみたい。
ただし「これまでの歩み」などというのはちとオーバーで、「歩み」
というほど歩いていない、まだまだかけだしの雑誌だ。
『BOOKISH』は、創刊されて2年足らず、現在まで5号が刊行されたと
ころで、よく言われる「3号雑誌」という汚名だけは、なんとかクリ
アー出来たかなというところだ。
一応、発売元がビレッジプレスという出版社で、取次ぎを通している
ので、全国誌・商業誌という体裁は整っているのだが、実態としては、
限りなくミニコミや同人誌のノリに近い。
私自身、出版や編集については、全くの素人で編集を一緒にやってく
れている仲間も同様だ。
皆、本好き、古本好き、そして雑誌発行に興味を持っている素人の集
まりなのである。
私の現在の生業はというと、吹田の関大前というところで飲食店をや
っているのだが、この小さな10坪ほどの店が、編集会議の場となり、
様々な事務作業の場となる。
時として、お客と対応しながら、傍らで、誰かが作業をしているなん
ていう事態も往々にして起こる。
もともと『BOOKISH』は、現在も発売元を引き受けてくれている、ビレ
ッジプレスの村元さんの呼びかけで創刊されたものだ。
村元さんは、71年に大阪でタウン情報誌『プレイガイドジャーナル』
を、翌年に創刊される東京の『ぴあ』に先駆けて出し、現在も、『雲遊天下』
という雑誌をはじめ、70年代カウンター・カルチュアーのテイスト漂う
魅力的な本を作り続けている。
その村元さんは、事務所がうちの店に近いということもあり、時々
店の方に顔をのぞかせてくれていた。
そんな時に度々出てきた話題で、「本を巡るこんな雑誌があったら、
おもろいやん」というのが、進展し実現したのが『BOOKISH』である。
だから、半分、言いだしっぺみたいなところがあるのだが、当初は、
雑誌の創刊なんて夢のまた夢のように思っていた。
その『BOOKISH』も、この12月刊行を目指している「戸板康二特集」
で6号を迎えることになった。
先日来、その特集の関係で、戸板邸に、二度ほどおじゃまし、未亡
人の当世子さんからいろいろとお話を伺う機会を持つことが出来た。
戸板邸は、品川区の洗足というところにあるのだが、関西人の私には、
全くといっていいほど馴染みのない土地だ。
古くからあるしっとりした住宅地のようだが、駅前は少しだけ開けて
いて、その開け方に野放図なところがなく、こじんまりしていて心地
いい。
そんな洗足の駅に降り立ったとき、突然、武田鉄也の古い映画ではな
いが、遠いところまで来たもんだという感慨が沸いてきた。
☆著者プロフィール-------------------------------------------
八子博行(やこ・ひろゆき)
1950年大阪生まれ。
小学校教師を20年続けた後、関大前で「ゲートマウス・カフェ」と
いう飲食店を経営。(ゆくゆくは古本も置きたいという)
昨年、季刊雑誌『BOOKISH』の創刊に参加、今年6月刊行の4号から
編集・発行人に。
http://homepage1.nifty.com/vpress/bkbackno.html
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