■■通天閣の見える街から(9)■■ 八子博行
〜栗谷川虹さんの内田百軒文学賞受賞作『茅原の瓜』のことなど〜
7月2日(金)〜4日(日)、恒例のOMM(大阪マーチャンダイズ・
マートビル)の古書ブックフェア−が行われた。今回は、「BOOKISH」
でも告知を掲載した関係から、会場で「BOOKISH」の販売をさせてもら
うことになった。「BOOKISH」は、3日間トータルの売り上げが25冊、
規模の割にはなんとも微妙な数字ではあります。
で、初日のお昼に、「BOOKISH」次号の特集「画家の書いたエッセ
イ」(仮)について、「SUMUS」同人の林さん、山本さん、扉野さんなど
から、意見を頂いた。林さん、そして扉野さんは、美大出身と言うこと
でアート関係の本に精通しておられる。
「SUMUS」の方々とは、南陀楼さんを除いては、初対面で、ちょっと
緊張ぎみだったのだが、みな気さくな方々で、貴重なアイデアを頂く
ことが出来た。興味深い画家達の名前が、次々と挙がる。
OMMの古書市が終わった今週、地元江坂の天牛書店でちょっと面白い本
を見つけた。『茅原の瓜〜小説 関藤藤陰伝・青年時代』(栗谷川虹・
作品社)という本で、帯に第七回内田百間文学賞受賞とある。栗谷川
さんは、以前、「BOOKISH」で木山捷平特集をやった時に、お世話に
なった方で、『木山捷平の生涯』(筑摩書房)という著作がある。
一昨年のちょうど今頃のこと、木山特集の件で、栗谷川さんには、
幾度となく電話を通じてお話を伺った。
こちらの稚拙な質問に対しても、ゆったり丁寧に答えて頂いた。
以来、御無沙汰だったのだが、こんなところでお目にかかろうとは。
懐かしさで、思わず本を手に取りレジへ。関藤藤陰(せきとう
とういん)は、栗谷川さんの自宅から1.5kmほどの、天神社の
社家に生まれた人物。氏の日常の散歩コースになっている場所でもある。
その関藤藤陰のことを栗谷川さんが知ったのは、森鴎外の『伊沢蘭軒』
の中にその記述を見い出してからで、散歩に通うようになって、何年も
後のことだったという。それ以来、関藤藤陰について調べはじめるのだが、
意外にも、幕末の歴史の中に途方もなく広がっており、幕末維新を一身
に体現したような人物だったと言う。
維新の尊王思想の支柱、頼山陽、開国時の老中主席・阿部正弘、
攘夷派の後ろ楯となった徳川斉昭など、みなその役割を演ずるのに、
藤陰の手を借りていたという。さらには、クナシリ・エトロフ・カ
ラフト南部まで踏査した探検家の顔まであるこのような大きな仕事
をした人物でありながら、世間的には殆ど知られておらず、歴史の
闇に忘れ去られた人物になったという。
というのも、生涯七度にわたって名前を変えており、役割が変わ
るごとに新たな名前で登場してくる。そのことにっよって断片化さ
れた事実のみが残り、同一人物としてのトータルな像が見えにくく
なってしまったという。
この本では、「青年時代」ということわりが付されているように、
頼山陽の愛弟子時代についての記述がメインになっている。これだ
けでも完結した史伝小説として十分面白いのだが、今後、阿部正弘
や徳川斉昭との関わりや、北方の探検時代についても続けて刊行し
てほしいものだ。
☆著者プロフィール-------------------------------------------
八子博行(やこ・ひろゆき)
1950年大阪生まれ。
小学校教師を20年続けた後、関大前で「ゲートマウス・カフェ」と
いう飲食店を経営。(ゆくゆくは古本も置きたいという)
昨年、季刊雑誌『BOOKISH』の創刊に参加、今年6月刊行の4号から
編集・発行人に。
http://homepage1.nifty.com/vpress/bkbackno.html
◎『BOOKISH』のホームページ゙開設!
http://www.sutv.zaq.ne.jp/ckabb202/
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