■■通天閣の見える街から(4)■■ 八子博行
『BOOKISH』6号(特集・戸板康二への招待)が1月中旬に刊行された。
『BOOKISH』の場合(というか、新刊書籍はどれもそうなのだろうけ
ど)、新刊が刷り上って各取次ぎ(今のところ、東販・日販・大阪屋)
への配本数やビレッジプレス経由の直販数が決まって、印刷所からそれ
ぞれに送ってもらうと、当然のことながら、雑誌は編集の手から離れて
しまう。
つい先日ま手を焼かせていた腕白坊主が、取りあえず一人前になって家
出をして行ってしまったような状態で、ある意味、ほっとすると同時に、
空虚でなんとなくさびしい時期でもある。
そんな中、編集作業以来、手にしていなかった戸板康二の著作を久し
振りに手にとった。
『BOOKISH』の特集で、坪内祐三さんが取り上げていて気になって
いた、『演芸画報・人物誌』(昭和45年・青蛙房)。
特集で、坪内さんはこの本のことを、こう書いておられる。
「私は、この本をその手の人物に興味を持ち始めた今から十数年
前 ‥‥‥ 。 その手というのは、明治大正の演劇関係文筆家は
もちろん、幸堂得知や饗庭篁村といった根岸派の文人や青柳有実、
坂本紅蓮洞、伊藤静雨といった畸人たちのことをさす」
ここに名前の挙がっている人物は、どれも興味深い。この一節を読ん
だために、『演芸画報・人物誌』は、私の中にインプットされたよう
なものである。
そして、同じ文脈の中で、坪内さんは、もう一つ大事なこの本の基本
情報をさりげなく挿入させておられる。
「一種の貴重な人物辞典として愛読(むしろ愛用といったほうが
適切か)した。」
確かにこの本は、「人物辞典」といってもよさそうだ、なにしろ百人
もの人物を戸板康二は、ここで取り上げているのだから。
であるなら、当然、「愛読」より「愛用」と言った方がピンと来る。
「演芸画報」(1907年〜1943年)は、明治・大正・昭和という三代に
わたる演劇雑誌であり、メジャー・マイナーを問わず、その時代の演劇
ジャーナリストがほぼ顔をみせている雑誌であった。
従って、先に坪内さんの挙げた「その手の人物」以外にも気になる人物
はいろいろ出てくる、「根津権現裏」を書いた藤沢清造、久保田米遷の
息子、米斎・金遷、さらには野村無名庵や、正岡容、長谷川時雨、食満
南北など、挙げだすときりがない。
中でも坂本紅蓮洞には惹きつけられた、前から名前は耳していたものの、
初めてどんな人物かがわかった。この本には、そんなに詳しく触れられ
ていないのだが、水上瀧太郎の「貝殻追放」や吉井勇の「娑婆風流」に
詳しいとある。「貝殻追放」だけは持っていたので、目を通してみたが、
実に面白く、なんとも魅力的な人物。「娑婆風流」の方もなんとか、読
んでみたいのだが、こちらは、古書価格が高く、手を出せそうもない。
☆著者プロフィール-------------------------------------------
八子博行(やこ・ひろゆき)
1950年大阪生まれ。
小学校教師を20年続けた後、関大前で「ゲートマウス・カフェ」と
いう飲食店を経営。(ゆくゆくは古本も置きたいという)
昨年、季刊雑誌『BOOKISH』の創刊に参加、今年6月刊行の4号から
編集・発行人に。
http://homepage1.nifty.com/vpress/bkbackno.html
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