■■古本バイト道■■ 第5回 濱野奈美子
穴八幡の古本まつりでは、帳場に入るシフトが1時間置きです。出店
している全部の本屋さんを2つのグループに分けて、それが1時間交代
なのです。つまり1時間働くと1時間休み。その間に自分の店の棚の整理
や品出しをします。これはBIG BOXでも一緒です。
でも、確かに1時間に1回程度棚をチェックして商品を補充することは
必要だとは思うのですが、それには1時間もかからないんですね。たいて
いは30分くらいで終わってしまうのです。んじゃ、その残った時間を
どうするのか?
本屋さんが「お茶のみに行こう」と誘ってくれることもあります。
ひとりでお茶することもあります。でも、そうそうお茶ばっかり飲んで
いられません。それ以外は?
公園のベンチに座っていました。付近を飛び回る大振りな蚊の襲撃に
耐えながら、今はなき10円均一の文庫本を買ってそれを読んでいました。
なんだか今思い出すととっても寂しい絵ですけど…。
…と、いうよりも仕事の関係でここ数日間見続けていた「冬のソナタ」
の影響で、私は今、どんな映像を思い出しても「冬ソナ」のテーマソング
つきになってしまうのです。そんで、もんのすごく悲しい感じに思えて
しまうのです。たとえ、あの時買った10円文庫が群よう子の小説だったと
してもです。もうね、やるせなさすぎてテンションが上がりません。
「何をしてくれるんだー!」って感じ。申し訳ないですが、今回はあんまり
笑うところないかも。これ読みながら公園でひとり文庫を読む若い女性を
想像してる人は、女性の顔はぜひチェ・ジウ(「冬ソナ」のあの美人女優
ですね)でお願いします。
さて、すっかり陽も落ちて、閉店時間が近づいてきました。ご存知の
通り、穴八幡宮は神社です。古本まつりはその神社の敷地の中にテントと
平台を設営して、開かれています。閉店たって、いったいどうするんだろ
う? と思っていたら、何のことはないビニールシートでぐるぐる巻きに
するのでした。その手慣れた手つき、素早さ、もう惚れそうです。私は
何もできずにただ見ているだけでした。
しかし、2日くらい後にもっとびっくりすることが起きました。雨です。
その日は、朝から曇っていたのですが、夕方からぽつぽつときました。
「あれ、来たかな?」と思うやいなや本屋さんたちはビニールシートを
抱えて飛び出していきました。その素早さは、閉店の時の比じゃありま
せん。当たり前なんですけどね、本は濡れたら売り物にならないので。
むしろ、屋根のないところに平台を出して濡れたら売り物にならない本
を並べようという勇気のほうがすごい気もするくらいです。
そんなこんなで、たくさんの初めての詰まった6日間が終わりました。
お給料は6日分まとめていただきました。そして、この6日のうち2日くらい
は、閉店後飲みに連れて行ってもらったような。そんでもって、飲んで
歌って暴れたような…いや、今回はチェ・ジウでしたね。そんなことする
はずないじゃないですか、ねぇ。
☆著者プロフィール------------------------------------------------
濱野奈美子(はまの・なみこ)
フリーライター。長い古本バイト経験を生かして『アミューズ』の古本特集や
『古本 神田神保町ガイド』(共に毎日新聞社)などで活躍する。本業のライ
ターでは古本だけではなく、サッカー、食べ物なども。なんでも来い。
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