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早稲田で読む早稲田で飲む【第5回】

第5回 BIGBOXで宝探し 南陀楼綾繁


 8月11日から、高田馬場BIGBOXの9階で「納涼 大古書市」がはじまった。仕
事のピーク時なので30分だけ覗こうと決めて、3日目の朝、10時のオープンと同
時に会場に足を踏み入れた。

 安藤書店さんが戦後の大衆小説本を大量に出していると聞いたので、まずそこ
へ。入って左の棚を見ると、たしかに、山手樹一郎や織田作之助、長谷川伸など
のペーパーバックが並んでいる(初日にかなり売れて、翌日補充したらしい)。
端から眺めていくと、どこかで見た描き文字が目についた。引き出してみると、
田村泰次郎『女体は嘆かず』(美和書房、昭和23)で、山名文夫の装丁だった。
表紙に描かれているバラのイラストがキレイ。1000円はまあまあか。
 他の書店の棚でも、花森安治が装丁している真船豊『姉妹』(八雲書店)を
250円で見つけ、すでに持ってるクセにまた買ったし、尾崎秀樹『文壇うちそと
 大衆文学逸史』(筑摩書房)や三ヶ島糸『奇人でけっこう 夫・左卜全』(文
化出版局)をリーズナブルな値段で手に入れられて、出勤前に得した気分。

 さて、BIGBOXでの古書市との付き合いも、ずいぶん長くなった。最初に行った
のは1986年、大学一年生のとき。BOGBOX展自体は、1970年代にはじまっている
が、最初は1階の入り口前でおこなわれていた。それが6階に移ったのが、1986
年か87年だと聞いた。うろ覚えだが、最初に行ったときは1階で見た気もする。
 しかし、ぼくには6階でやっていた時期の印象が強い。エレベーターを降りる
と、左側がゲームコーナーになっていて、奥からは卓球をする「カコーン、カ
コーン」というのどかな音が。正面の相当広いスペースが古書展会場で、卓球の
音を聴きながら、一時間ぐらいかけて本を見ていった。
 大学生の頃のぼくはクロっぽい本にはあまり興味を持たず、最近の本を安く手
に入れるコトしか考えていなかった。だからココでは、文庫や新書、雑誌のバッ
クナンバーなどを一冊100円〜300円程度で、毎回相当な量買っていたと思う。同
じように、安本の漁場としていたのが高円寺の古書展だった。
 そうして集めた本は、創元文庫やハヤカワ文庫の幻想・怪奇小説ものが100冊
とか、岩波文庫や講談社学術文庫の思想史・民俗学ものが50冊とかだったが、
けっきょく半分も読みきれず、学生時代の下宿を引き払うときに、古本屋に引き
取ってもらった(数百冊売っても数万円にしかならなかった)。

 大学を出てからは、そういう「安本買い」と「雑本読み」が意味のないような
コトに思えて、BIGBOXからは遠ざかっていた。1990年代半ばには、6階からまた
1階の入り口前に戻ったが、大学生がコンパの待ち合わせで大騒ぎするなかで本
を探すのがちょっとイヤだったこともある。ぼくは勝手に、「日本でいちばん
(周辺環境の)IQが低い古書市」と呼んでいるが。
 しかし、ここ数年は、二カ月に一回程度BIGBOX展を覗きに行っている。相変わ
らずの安本買いと雑本読みなのだが、それを15年ほど続けているうちに、自分だ
けの買い方・読み方「系統」ができてきたように思うからだ。冒頭に挙げた山名
文夫の装丁本だって、その系統になんとなく合致しているから、目についたのだ
ろう。
 9階での開催は毎年夏で、今年で3回目だという。1階よりは上の階でやるほ
うが、古本屋さんの気合が入っているように見える。バカは高いところに昇りた
がるというが、BIGBOX前にたむろする連中はわざわざ9階まで昇ってこないのだ
から。


☆著者プロフィール--------------------------------------------------------
南陀楼綾繁(なんだろう・あやしげ)
1967年、出雲市生。1986-90年、早稲田大学第一文学部に在学。
現在、ライ ター・編集者。「sumus」「サンパン」「本のメルマガ」などの同人として、
本 に関するあれこれを書き散らす。
世界初(自称)の古書目録愛好フリーペーパー 「月刊モクローくん通信」を発行中。
問い合わせはメールで。kawakami@honco.net
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2004年08月30日

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