■■目まいのする古本相談室 第3回■■ 浅生ハルミン
タンタンさま(23歳女性)
【Q】
はじめましてー。ワタクシ、昨年末に結婚しました。で、引っ越し
て旦那と住むようになったのですが、実家より狭くなったのでかわ
いい本たちが本棚からあふれて床に積まれています。それを旦那が
独身時代から飼っている猫たち(2匹)が狙うんですっ!
隙を見せると頭突きして本を崩したり、爪とぎに使おうとするので
す。旦那はそんな本捨てろとか言うぐらい理解がありません(長新太
さんの絵をヘタクソ扱いします)。
どうしたらよいのでしょう。ハルミンさん助けてー。
【A】
タンタン様、猫に本を頭突きされるのですか? まあ、なんて
うらやましい!!
実は私の家にも猫がいます。猫がうちに来た当初は、大事な本に
爪を立てられないようにガラス戸のついた本棚に用心深く避難さ
せたりしていたのですが、どういうわけか猫は本に興味を示すこと
なく、いたって平常心なのであった。ただ、ミシンには異常な執着
をもっていた時期がありました。私がミシンで作業をしているとき、
ミシン針の動くところにちょいちょいっと前足をかけてきて…。
まさか針の下には入らないだろうとタカをくくっていたのも束の間、
思わず猫の前足をダダダと縫ってしまって私も猫も同時にぎゃーっ!
と絶叫したのでしたが、それ以来猫は私がミシンを出すのを見ると
さりげなく隣の部屋へ入ってゆきます。猫と災難といえばそれくらい
で、あとはいたっておとなしいうちの猫。
猫のあらゆる猫らしい局面に関わってゆきたいと願っている私と
しては、「店で飼ってる猫が『描かれた幕末明治』っていう7000円
もする本に頭をこすりつけてるから爪研ぎされたら大変だと思って、高
いところへ隠そうとしたらすでに外箱が刺身のつまみたいにぼろぼろに
なってたんですよ!」という、とある古本屋さんちの溌溂とした猫っぷり
がうらやましくてしょうがありません。
話は変わって、ある日、知人から陸亀をあずかりました。
陸亀はずいぶん育ってて、大きな椰子の実くらいの大きさと重みを
もち、軽い椅子とかだと頭でそのまま部屋のすみまでずいずい押し
進むくらいのたくましい力があるので油断がなりません。
その亀を部屋に残し、一日外で遊んで帰ってきたら、なんと私が
描いた絵の上に亀のうんこの茶色いタッチが…。はっとして床を
見ると亀が足の裏にうんこをつたまま部屋を歩きまわったと思われ
る形跡があたりいちめんにちりばめられて…。
それで私の描いた絵の上にもちょうどいいバランスで茶色い
テクスチャーがずびずびーっとのって…。いっしゅんヨゼフ・ボイス
のドローイングかと思いました。不思議とわき上がるほがらかな気持ち。
動物のうんこがこんなにかわいいと思えるだなんて。しかもこんな
ことを意図的にする人は滅多にいません。その昔、ショパンは猫が
偶然ピアノの鍵盤の上を歩いたことをヒントにして「子猫のワルツ」
をつくったそうだし、狩野永徳という人は猫の足跡を梅の花にみたてて
屏風絵を描き、お殿様にほめられたそうだし、こんなふうに、猫が本に
爪をたてることも偶然を利用した動物と人間のコラボレーションだと
思えば、なんらかの人生のたしになってゆくのではないでしょうか。
もし古本屋さんで「猫かじり跡有り」っていう注意書きがしてある本を
見つけたら絶対買う! 収集したいくらい! そんな本があったら
いいなあ。
☆著者プロフィール----------------------------------------------
浅生ハルミン(あさお・はるみん)
イラストレーター。『彷書月刊』にて「ハルミン&ナリコの読書クラブ」を
連載中。『modern juice』にも毎号寄稿。その他数々の雑誌にイラストや
コラムを寄稿。本の装丁も手がける。
集めた古本を販売する「ハルミン古書センター」も次々と支店が。
ハートランド(西荻窪)http://www.heartland-books.com/
古書上々堂(三鷹)〒181-0013 三鷹市下連雀4-17-5 TEL 0422-46-2393
古書現世(早稲田)http://www.w-furuhon.net/
上記古書店でハルミンセレクトの古本を販売中。
「ご来店お待ちしております あさお」
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