― 野外劇を観て来ました ― 久保木 秀直
野外劇を観てきました。 題名は「東京ウエポン」。時は7月半ば、場所は花園神社 (新宿)のテント。いやぁ〜実に楽しかったです。 作・演出は松村武さんといって、僕のいた早稲田大学演劇倶楽部の大先輩(←ほとん ど面識ない)なのだけど、 僕は今まで見た松村作品の中で今回が1番おもしろかった。
何が面白かったかというと、1つは、“外波山文明率いる椿組”と“小劇場界の気鋭=松村武”が手を組んだという点。 外波山文明氏というのは、芸歴30年以上の役者さんで、一人芝居「4畳半襖の下張り」は、公演数170回以上ともいわれている、いわば演劇界の重鎮。
一方、松村武氏というのは、自ら「カムカムミニキーナ」(八嶋智人氏も在籍)という劇団を主宰し、現在最も人気のある集団の一つになるなど、今や小劇場界のホープ。
いやはや、この2人が一緒に舞台をやるとは夢にも思わなかった。僕は、外波山文明という人は、現在の“小劇場”なんていう芝居のスタイルを「こざかしい」思っていると思っていたし、松村武という人は、外波山氏のような芝居をやっている人たちを「ウザったい」と感じていると思ってたからだ。
つまり、この2人が組むということは、「似て非なるモノの融合」いいかえると「K-1vsPRIDE」、「異文化 コミュニケーション」、「この液体とこの液体を混ぜるとどうなるの?」的なおもしろさがあったのだである。
2つ目は、出演者に、年齢も、バックグラウンドも統一性がなかったという点。普通、野外劇をやるならば、体をメチャクチャ動かすし、声とかも通りづらいので、 「それように訓練された役者」を使った方が良いのではないかと思う。しかし、この芝居は違った。故・逸見政孝氏の娘・逸見愛さんを始め、TV、映画、舞台と様々な ジャンルの役者達が参加していた。「こんなメンバーでまとまるのかなぁ」と半信半疑だったのだが、ふたを空けるとびっくり!“シューッ”とまとまっていたのだ!確かに声の聞き取りづらさや、芝居の質の違いはあったけど、なんか“こいつら芝居が 大好きなんだなぁ〜”という感じが、作品につながり、観客につながって、みごたえ のある空間が創られていたのだ。
3つ目は、やはり野外劇(テント公演)であったという点だろう。今は、演劇というと、劇場があって、そこで上演するというのが当たり前になっているが、昔は、テント公演や、野外公演というのが珍しくはなかったのだそうだ。テント公演には独特 の雰囲気がある。この芝居では、客席が、木のひな壇になっていて、“売り子”が大っきな声で、ビールやジュースを売っていた。観客は、入り口で貰った団扇をパタパタやりながら、大きな声で談笑している。なんか、野球場や、お祭りにいるような感覚になる。普通の劇場だと、なんだか少し敷居が高い感じがするけど、テント公演だとスゴク大衆的。不思議なのは、舞台が始まる前は、客席の空間の中に舞台がある様に感じられるのに、本番が始まった瞬間!一瞬にして、舞台の空間 の中に客席側が同化してしまうという点である。普通の劇場ではなかなかこうはいかない。客席と舞台がどうしても別の空間になりがちになってしまうのだ。
劇場公演が 「ある空間を外から覗いてみる感じ」であるのに対し、野外劇は、「ある空間の中の一部になった感じ」がするのだ。自分がセットの一部になったような感じで、同じ空間の中で、その様子を観ている感じがする。野外劇は、演劇の中では、非常にLive(ライブ)的要素が強いのだと思う。音楽のLiveなどでは、よくファンがパフォーマーと一緒になって一体化している光景を目にする。これを見ていると僕は 「音楽っていいなぁ」と嫉妬してしまうのだが、野外劇にもそれと似たような感じがあると僕は思うのだ。
「人を興奮させるもの」、この事に僕は非常に関心を持っている。それは、自分が役者だからだと思うし、役者は人を感動させるものだと思うし、感動という事に、 興奮はつきものだと考えるからである。先程も言ったが、僕はよく、同じ表現技法の1つとして、“音楽”というものに嫉妬するのだ。 音楽は、音一つで“観客の心を もっていく”ことができる。そして、パフォーマーの投げかけるモノに対して、観客は、受け取った興奮を体イッパイに表わして、笑い、泣き、飛び跳ねることができるからだ。音楽が動物的だとすれば、芝居は理性的な要素が強いんだと思う。
1〜2年前頃、「音楽と演劇が一体にならないかなぁ」などとよく考えていたことが ある。そしたら凄いことになるんじゃないかと思ったから。実際、そんなバンドを 作ったりした。で、わかったことがある。それは音楽も、演劇も“声(音)と体と心を基本にしてつくられている”という事。もちろん細かい点ではいろいろ違う点はあるのだけど、僕の実感としては、“演劇”と“音楽”を構成している要素はスゴク似ているのだという事だった。
野外劇の話にもどろう。
野外劇は、観客に対して音楽のLiveに近い感覚を与える。演劇の中では、かなり動物的に鑑賞できるスタイルであると思う。この事は、演劇界にとって1つの希望なのではないか?観客も役者も一体になって、一緒に泣き、 笑い、叫ぶ芝居!そんなものがあったら、きっとおもしろいのではないだろうか!? 野外劇には、そのような事を可能にする希望がある。そんな気がする。
「東京ウエポン」の終了後、主宰の外波山氏がこのようなこと言っていた。「現在は、なかなかテント公演がしにくい時代になって いる。テント公演の灯を消さないようがんばっていきたい。」・・・・「観客が最も興奮する芝居」、この事はスタイルはどうあれ、演劇人 にとっては、1つの理想であるはず。
僕は、「東京ウエポン」を観て、興奮したし、 感動もした。希望もある。ちょっと昔までは、早稲田の劇団も、大学などでよく野外公演などをやっていたのだ。今では早稲田の野外劇は、早稲田大学演劇研究会のテン ト公演ぐらいしか聞かないが、ちょっと昔は、鴻上尚史の第三舞台が、学校の目を盗んで、一晩の間に大隈講堂の前にテントを張って公演をやったとか、学校からしめだ された劇団が、小講堂の前で野外公演をやったなどという話がある。また、寺山修司などは、杉並区一帯を使って、十九ヵ所で十九の演劇が同時多発的に始まり、次第に一つの事件となって行くという“30時間市街演劇「ノック」”という公演を行っ た。なんてことが、伝説のようにどっかから聞かされたりした。
現在、この椿組の野外公演は、毎年一回、新宿ど真ん中、「花園神社」で行われているのだが、一般の人はもちろん、演劇ファンの人にもあまり知られていないように思う。野外劇はおもし ろい。僕も若い世代の舞台人として、野外劇の灯を消さないよう見守っていきたい。
☆著者プロフィール---------------------------------------------------

久保木 秀直(くぼき ひでなお)
S.52年 茨城県生まれ、千葉県育ち。早大在学中、早稲田大学演劇倶楽部に所属。演劇を始める。innerchild,INSTANTwife,ロニーロケットなどの公演に参加。
98年、CMディレクターでもある演出家、塩田泰造のユニット“JALOPY”に初参加。以後現在に至るまで、ほとんどの塩田作品に出演。2000年より、歌と踊りと芝居の融合をコンセプトにしたバンド、霞町楽団の立ち上げに参加。霞町楽団のボーカル 兼演出・構成・振り付けなどを担当。バンドでの名前は「まろ」。ここ数年の目標は、「日本一の芝居を打つこと!」その為毎年正月には、初詣に行って、お祈りするのが習慣。 現在はフリーで活動中。
★所属劇団『大人の麦茶』ホームページ
http://www.otomugi.com/
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