■■通天閣の見える街から(2)■■ 八子博行
12月6・7日(土・日)と、私の店で、堀江で貸本喫茶をしている「ちょうちょぼっ
こ」の女の子たちが「古本バザー」を開いた。
「ちょうちょぼっこ」とは、今年の春ごろ彼女たちが出した、『本箱』という素敵な
大阪の古書店マップを拝見し、『BOOKISH』4号に彼女たちのスペースを紹介させ
てもらって以来、ちょくちょく行き来をしていて、そんな付き合いの中で今回の
古本バザーの話が実現した。
「ちょうちょぼっこ」の魅力は、その名前から来るイメージ通り、主催する四人
の女の子たちの、とてもまったりした雰囲気につきるはないだろうか。オジさんで
ある私も話していて疲れない、楽チンなのである。今回は、そんな四人の女の子が
仕入れた300冊弱の古本を展示・販売した。
勿論、プロの古本屋ではないから、市などで仕入れるのではなく、一人一人が古
本屋を足で稼いで仕入れてくる、いわば「せどり」で集めた本である。これが見て
いるとなかなか楽しい。
「せどり」で、しかも古本屋の百円ワゴンや三百円の棚を回るだけで、よくもまあこ
れだけ集められるものだと感心させられた。
しかも守備範囲が広い、渋い文芸系の本や、サブカル系、児童書やコミックなどに
混じって、『もうちょっとで最高』(奈良林祥・ワニブックス)なんていう一昔前の
ハウツーセックス物まで混ざっている。
今回のバザーは、過去行ったバザーの中でも最高の売り上げがあったそうで、
ともに企画した私としてもまずは成功ということで、ほっとしていると同時に、
こんなことなら私も出せばよかったなんて思ったりした。
『BOOKISH』の方は、6号「特集・戸板康二への招待」の編集に追われている。
この特集の中で、初めて戸板康二の世界に触れたのだが、その奥深さにはまって
しまった。専門である歌舞伎や劇の評論から、様々な人物誌やミステリーなど、
戸板康二の世界は広く深い。
そのような、仕事の広がりから来るものなのだろうが、その交友圏の広さにも驚か
される。同時に、これは山の手育ちの慶応ボーイである戸板康二の人付き合いの
スマートさの賜物のように思えてならない。
ここで言う、スマートさとはカッコ良さやおしゃれというのとは、ちょっと違う。
他者に対するセンシティブな配慮とでも言ったらいいのだろうか。
戸板康二自身は、恐ろしく不器用な人だったらしいが、こと人との付き合いに関して
は、話し上手で駄洒落好き、会話の名手だったようだ。そして、気配りを忘れない、
よく語られるエピソードだが、外出する時には、祝儀袋を忘れず、札は常にピン札を
用意していたという人だ。
また、戸板康二の文章は、難解な言い回しや難しい語句がほとんどなく、とても素直
で読みやすい。
しかも、歌舞伎評論や人物評伝にしても、批判めいた悪口はほとんど書かれておら
ず、これについては、逆に周囲からとかくの指摘があったらしい。また、ミステリー
でも『団十郎切腹事件』(昭和35年)で直木賞をとるほどであったが、これまた、
殺人事件がほとんど起きないミステリーとして有名である。
このような戸板康二の過剰なものを嫌う資質が、とても好ましく思える。いい意味で
の育ちのよさ品のよさが感じられる。
恩師である久保田万太郎は、毀誉褒貶の激しい人で、その名誉欲や権力欲、ボス
的体質について語られることが多く、久保田万太郎に関する評伝は、どれをとって
も面白く、はずれがないという評判まであるらしい。
それはそれで、魅力的な人であり、興味深い人物ではあると思う。
しかし、付き合うとなると話は別だ、やはり戸板康二のような人物と付き合いたい。
ともに、慶応出身という共通項はあるものの、片や下町育ちと山の手育ち、その
キャラクターはというと、なにからなにまで対称的な師弟だが、お互いそれぞれに
ないものを見続けていたのかもしれない。
☆著者プロフィール-------------------------------------------
八子博行(やこ・ひろゆき)
1950年大阪生まれ。
小学校教師を20年続けた後、関大前で「ゲートマウス・カフェ」と
いう飲食店を経営。(ゆくゆくは古本も置きたいという)
昨年、季刊雑誌『BOOKISH』の創刊に参加、今年6月刊行の4号から
編集・発行人に。
http://homepage1.nifty.com/vpress/bkbackno.html
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