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早稲田で読む早稲田で飲む【第2回】

第2回 『グランド坂下の昼下がり』  南陀楼綾繁

だいたい二ヶ月に一度、上野松坂屋前発−早稲田行きのバスに乗って、早稲田大学図書館に遊びに来る。先日、終点のリーガロイヤルホテルのヨコを通り、グ ランド坂を上がろうとして、アレッと思った。よく見ると、大隈通りに曲がる角 にあった、中華料理屋の「芳葉」が消えていた。ありゃあ。

 ココはこの辺の小さな中華料理屋と違い、カウンターがなく、一人の客も円卓 に相席という店だった。たしか二階が座敷になっていて、学生のコンパでよく使 われていたと思う。えびチリソースや鳥から揚げの定食が、安くて量がたっぷり あった。特別うまいワケでもないのだが、学生の姿が消える昼の二時ごろ、でっ かい円卓の隅っこで文庫本のミステリを読みながら食べると、豊かな気分になれ た。

 大学生の行動範囲は、多くの場合、サークルで決まる。ぼくは文学部なので、 最初しばらくは地下鉄早稲田駅の近辺をうろうろしていた。グランド坂に来るよ うになったのは、一年の終わりに本部にある某サークルに入ってからのコトだ。 もちろん、安部球場はまだあったし、図書館は本部のなかだった。大隈通り側に ある小さな門を出て、寺のヨコにある細い道を抜けて、グランド坂に出る。昼飯 なら先の「芳葉」かミキランチの「キッチンミキ」、女の子とお茶するときは甘 味喫茶の「こけし」(昼のおにぎり定食もウマかった)、研究会終了後の飲み会 は安くて汚い飲み屋「いこい」で決まりだった(ちなみに「芳葉」以外はいまで も全部生き残っている。スゴイ)。一人で開拓する勇気がなかったので、他の店 にはほとんど入ってない。それぐらい、サークルでの行動パターンに依存してい たのだ。

 グランド坂の上がり口にある「金城庵」という蕎麦屋は、早稲田を代表する有名な店だが、在学中にはたしか一度も入ったことがない。それが最近では、図書館の帰りにこの店に入って、天丼かカツ丼か天ぷらそばを頼むようになった。ココのテーブルは大きいので、本を読むのにもちょうどいい。読みながら食べるグランド坂の昼下がりは、学生時代から変わらないが、ひとつだけ変わったのは、 ヨコにビール瓶が一本立っていることかなあ。アレッ、いつの間に(笑)。
(2003.6.13)

☆著者プロフィール--------------------------------------------------------
南陀楼綾繁(なんだろう・あやしげ)
1967年、出雲市生。1986-90年、早稲田大学第一文学部に在学。
現在、ライ ター・編集者。「sumus」「サンパン」「本のメルマガ」などの同人として、
本 に関するあれこれを書き散らす。
世界初(自称)の古書目録愛好フリーペーパー 「月刊モクローくん通信」を発行中。
問い合わせはメールで。kawakami@honco.net
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2004年08月16日

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