■■目まいのする古本相談室 第1回■■ 浅生ハルミン
O・Mさま(25歳女性)
【Q】
ハルミンさん、こんにちは。いつも『彷書月刊』拝読しています。
最近気になることがあります。古本屋さんに行くと店主のオジサン
が鼻歌を歌っていたり、奥さんと夕飯のメニューを決めていたり
と思わず聞き耳を立ててしまう事があります。このような事は
ほのぼのしていて嫌いではないのですが、気になってしまい本棚
に集中できないという本末転倒ぎみになってしまう最近です。
ハルミンさんはこのような事に出会うことはありますか?
気になりすぎるということはないのでしょうか。
【A】
古本屋…、それは人と人とが銭と本を交換しあう「商店」という
公の場所でありながら、草履を脱いで一歩踏み込めばそこは家族だ
んらんの「茶の間」という私的空間をも内包する、いわば8時だヨ!
全員集合の舞台セットにも似た多目的空間のようなもの……と思う
私は、子供の頃いちどでいいからお店屋さんの子供になってみたいと
思ってました。だから、そういう間取りの古本屋さんに出くわすと、
その頃の気持ちがよみがえって少し懐かしいです。
しかし、そんな甘酸っぱい気分は、ある日、とある一軒の古本屋
さんによって大きく揺るがされました。
その店は、かつてお店の容積いっぱいの分類されていない本に、
すべて同じ値段がついているという(安く均一にしてさっさと本
をさばく合理的な販売法とはどう見てもちがう)、やる気のなさ
が漂うお店だったのですが、先日、ひさしぶりに行ってみました
ら古いお店はすっかり改装され、古本と中古雑貨を売る「リサイ
クルショップ」に変わっていました。中へ入ると古本は店の4分
の1ほどのコーナーに縮小されており、ほんの数冊、なぜか透明
アクリル板で仕切られた地べたにじかに置いてあった。しかも、
微妙に高額な値段のまんが本が5、6冊…。さっき、ショップス
ペースと地続きの和室で息子さんらしき大柄の人物がパソコンを
覗き込んでいたけれど、あれは値段を調べていたのかしら…。
古本コーナーはすぐに見終わってしまい、リサイクル雑貨コーナー
の湯のみセットとか螺鈿の壺とか日本人形のごちゃごちゃした中
から、可愛らしいこけしをひとつ見つけて買おうとしたとき、その
息子さんらしき人物が突然大声で、店番をする母親らしきおばさん
をなじり始めました。その声はどんどん大きくなって、だんだん
泣きと脅しと興奮が加わり、これまでの自分の半生を憂い、物を畳
に投げつけ、おばさんは縮こまってばつが悪そうでしたが、私が
手渡したこけしのお金はさささっと受け取られ、「包むもの要る?」
と、べつだん、うろたえる様子はありませんでした。このおばさん、
慣れているのだ、と思いました。
おだやかな日曜日の午後、本に誘われて出歩くつもりが自分の意志
とは無関係に家庭の事情にうちのめされて「今日ははずれー」としょ
んぼりしてしまうこともありますが、次に入った古本屋さんでいい本
が見つかると、そっこく「あたりー」に変わります。こんなふうに幸せ
と不幸が予測のつかないバランスで同一線上に乗っかっているところも、
私が古本屋さんめぐりをやめられない理由のひとつかもしれません。
それよりむしろ、自分の家の本を買い取ってもらうとき、自分の部屋
の中に古本屋さんが入ってくることのほうが緊張します。古本屋さんが
男性だったりすると女である私の緊張はマックスに達してしまいそうで
すが、みなさんは、そのあたりいかがお考えなのでしょうか。それでは
失礼いたします。
■ハルミンさんへの相談は下記アドレスまで。匿名可。
books@website.co.jp
☆著者プロフィール----------------------------------------------
浅生ハルミン(あさお・はるみん)
イラストレーター。『彷書月刊』にて「ハルミン&ナリコの読書クラブ」を
連載中。『modern juice』にも毎号寄稿。その他数々の雑誌にイラストや
コラムを寄稿。本の装丁も手がける。
集めた古本を販売する「ハルミン古書センター」も次々と支店が。
ハートランド(西荻窪)http://www.heartland-books.com/
古書上々堂(三鷹)〒181-0013 三鷹市下連雀4-17-5 TEL 0422-46-2393
古書現世(早稲田)http://www.w-furuhon.net/
上記古書店でハルミンセレクトの古本を販売中。
「ご来店お待ちしております あさお」
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