■■ヨーコの高田馬場ふらふら日記(1)■■ 高田葉子
上京してはじめて住んだ街が高田馬場で、ことしで13年めになります。
通学路に信号ひとつなく、ランドマークは火の見櫓、のような環境で育った
私にとって、プール、ビリヤード場、それに本屋さんまでが一つの建物に詰ま
った「ビッグボックス」の存在は、衝撃でした。こんな便利なところが近所
にあるなんて、本当に都会で暮らしているんだなーと実感したものです。
ただ、当時、浪人生だったので、せっかくのビックボックスデビューも、駅
前にたむろする学生サークルのコンパ&ボーリング大会のような心踊るイベン
トで、ではなく、予備校帰りに、ひとりファンシーショップでマニキュアの試
し塗りをしたり、三省堂で赤本を買ったりといった地味な結果におわりました。
そんなあこがれの場所であったにもかかわらず、実は、この建物の2階から
上にはほとんど足を運んだことがないことに気づき、いまさらながら探検し
てみることにしました。
まずは、最上階へ。「ニューヨークの北海道フェア」という紛らわしい名前
の催し開催中のレストランと、宴会場がありました。夜景を眺めながらのディ
ナーが売りのようですが、カネロニグラタン、ヒレ肉のピカタピッツアイオー
ラ風など、馬場に不似合いな響きのメニューが原因か、閑散としていました。
緑・赤・青の西武カラー裏階段をおりると、キテイちゃんボウルとレオ人形
がお出迎え、のボーリング場です。「箱だしだとキャッチがよく、キャリーダ
ウンにも強いが、ポリッシュに良さはのこる」といった素人には暗号のような
新製品情報の掲示板や、オイル抜きツールも揃い、本気で投げる人が出入りし
ていることがわかります。一方、バーバパパや、トトロをピンに描く「ピンペ
インテイングコンテスト」などゆるい企画も充実のようで、好感がもてます。
ゲームコーナーのトイレには、「未成年の喫煙者は通報します」との貼り紙
が…。その甲斐も虚しく、プリクラ機械に垂れさがるビニールカーテンのモデ
ル写真(指をL字型にし、ポーズをキメた女子高生。「CHO→ゲンキ!!」と
いう文字入り)の目・鼻・眉間すべてに「焼き」が入っていました。ちなみに、
男性同士の利用が禁じられているプリクラもあり、とても気になりました。
ビートのきいたリズムに誘われ、階下へ進むと、「くぅるっとぉーまわって
ぇー、シックスマンボォー、フウーッ!」と葛城ユキばりのハスキーボイス姐
さんが、エアロビ指導中で弾けていました。真剣に見ていたからか、プログラ
ムを渡され、勧誘されました。「ちょこっと燃焼」「ファットバーナー」とい
った魅力的なネーミングのコースが並び、人集めもなかなか大変なようです。
なじみのないフロアを行き来したので、お口なおしに、コンコースの古本市
で締めることに。古本を探すのはもちろん、帳場のおじさまたちをこっそりの
ぞくのも楽しみなのです。「はい、300万円ねー」とおつりを渡されたり、蚊
取り線香の缶利用の輪ゴム入れなどをみるたびに、ビックボックスで一番好き
な場所はここだなあとおもいます。「建物の正面の壁画は“走る人”のほかに、
何枚か隠れている」というのが、ビックボックス伝説らしいのですが、そのま
ぼろしの一枚が、古本即売会風景だったらいいのになとおもいました。
☆著者プロフィール----------------------------------------------------
高田葉子
都内某新刊書店勤務。家賃更新7回めに突入でもまだまだ住みたい…。
【高田葉子 今月の気になる一冊】
『いろは』創刊号…ネット古書店くらげしょりん市川さん編集の愛らしい雑誌。
店では古書コーナーよりも、生活書コーナーで、ものすごく売れています。
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