■■通天閣の見える街から(1)■■ 八子博行
今回から、コラムを書かせていただくことになった。
『BOOKISH』という、本を巡る評論・情報を取り上げた季刊雑誌の編集
をしており、このコラムでは、『BOOKISH』を通じて出会った人・本・
書店などのことをランダムに書けたらと思っている。
今回は、初回ということで、私のことや、『BOOKISH』のこれまでの
歩みなどを自己紹介もかねて書いてみたい。
ただし「これまでの歩み」などというのはちとオーバーで、「歩み」
というほど歩いていない、まだまだかけだしの雑誌だ。
『BOOKISH』は、創刊されて2年足らず、現在まで5号が刊行されたと
ころで、よく言われる「3号雑誌」という汚名だけは、なんとかクリ
アー出来たかなというところだ。
一応、発売元がビレッジプレスという出版社で、取次ぎを通している
ので、全国誌・商業誌という体裁は整っているのだが、実態としては、
限りなくミニコミや同人誌のノリに近い。
私自身、出版や編集については、全くの素人で編集を一緒にやってく
れている仲間も同様だ。
皆、本好き、古本好き、そして雑誌発行に興味を持っている素人の集
まりなのである。
私の現在の生業はというと、吹田の関大前というところで飲食店をや
っているのだが、この小さな10坪ほどの店が、編集会議の場となり、
様々な事務作業の場となる。
時として、お客と対応しながら、傍らで、誰かが作業をしているなん
ていう事態も往々にして起こる。
もともと『BOOKISH』は、現在も発売元を引き受けてくれている、ビレ
ッジプレスの村元さんの呼びかけで創刊されたものだ。
村元さんは、71年に大阪でタウン情報誌『プレイガイドジャーナル』
を、翌年に創刊される東京の『ぴあ』に先駆けて出し、現在も、『雲遊天下』
という雑誌をはじめ、70年代カウンター・カルチュアーのテイスト漂う
魅力的な本を作り続けている。
その村元さんは、事務所がうちの店に近いということもあり、時々
店の方に顔をのぞかせてくれていた。
そんな時に度々出てきた話題で、「本を巡るこんな雑誌があったら、
おもろいやん」というのが、進展し実現したのが『BOOKISH』である。
だから、半分、言いだしっぺみたいなところがあるのだが、当初は、
雑誌の創刊なんて夢のまた夢のように思っていた。
その『BOOKISH』も、この12月刊行を目指している「戸板康二特集」
で6号を迎えることになった。
先日来、その特集の関係で、戸板邸に、二度ほどおじゃまし、未亡
人の当世子さんからいろいろとお話を伺う機会を持つことが出来た。
戸板邸は、品川区の洗足というところにあるのだが、関西人の私には、
全くといっていいほど馴染みのない土地だ。
古くからあるしっとりした住宅地のようだが、駅前は少しだけ開けて
いて、その開け方に野放図なところがなく、こじんまりしていて心地
いい。
そんな洗足の駅に降り立ったとき、突然、武田鉄也の古い映画ではな
いが、遠いところまで来たもんだという感慨が沸いてきた。
☆著者プロフィール-------------------------------------------
八子博行(やこ・ひろゆき)
1950年大阪生まれ。
小学校教師を20年続けた後、関大前で「ゲートマウス・カフェ」と
いう飲食店を経営。(ゆくゆくは古本も置きたいという)
昨年、季刊雑誌『BOOKISH』の創刊に参加、今年6月刊行の4号から
編集・発行人に。
http://homepage1.nifty.com/vpress/bkbackno.html
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